首の痛み(3):耳の裏に出てくる熱感
目次
首が痛くて夕方には耳の裏に熱感 | 頸肩腕症候群
■患者
80代・男性
■来院
2017年5~7月
■症状と来院理由
血液検査で甲状腺の数値が悪く大きな病院へ通院中。
病院で首の痛みを訴え、鎮痛剤の服薬とPTによるリハビリを受けている。
しかし、3ヶ月経っても改善する気配が無かった。
ある日、散歩中に通りすがりで看板を発見。
電話予約を入れて来院に繋がった。
【症状】主訴は首の右側の痛み
・首を右側へ倒すと痛みが再現される。
・首を右へ捻ると痛みが再現される。
・首を左側へ倒すと痛みが再現される。
・首の痛みに関係するのか耳の後ろの頭皮が突っ張る。
■治療内容と経過
【初回】患者様へ先ずは首の動作改善から、身体の変化を感じて頂く旨をお伝えしました。
座ったまま、首から背中へかけて触診を行わせて頂きました。
胸椎の中間部から下の周囲に圧痛点がありました。
首の動作に関係することから患者様に説明を行い、足にあるツボへ刺鍼。
私:「首をゆっくり右側へ倒してみて下さい。」
1回首を右側へ倒してみて。
患者様:「あれっ!?」
2~3回同じように倒してみて
患者様:「こんなに早く効くものなんですか?」
私:「はい!鍼ならピンポイントで直ぐです。実感頂けて嬉しいです。」
さらにもう1本足にあるツボへ刺鍼。
私:「今度は左へ首を倒してみて下さい。」
患者様:「あぁ、嘘じゃないんですよね?」
私:「はい!本当ですよ。では、首を捻る動作はどうでしょう?」
患者様:「捻る時はいいんだけど、戻す時に少し突っ張る感じがするね。」
先ほどの触診で胸椎の中間からやや上に圧痛があったことが思い出される。
その部位が側頭部の筋肉で顎関節に関係し、また首の動作にも影響が出る事を説明して手首にあるツボへ刺鍼。
もう一度首を捻って頂くと…
患者様:「少し楽になった。」
耳の後ろの皮膚の突っ張りがとれ楽になった様子でした。
ベットにうつ伏せになって頂き、首の触診をもう一度行わせて頂く。
私:「ここ!ここ詰まった感じしませんか?」
患者様:「します!押さえて頂くと気持ちいい。」
足首にあるツボを押さえてみると…
患者様:「頭がスッとします。」
確認を終え足首にあるツボに刺鍼。
もう一度起き上がって頂き首を捻って頂くと
患者様:「気になりません!ところで・・・」
私:「どうかなさいましたか?」
患者様:「こんなに直ぐに効くと思っていなかたので伝え忘れていた事があります。実は今は症状が出ていないのですが、夕方になると耳の後ろがジリジリとしてきて、熱くなってくるんです。治療出来ますか?」
私:「首の動作が改善されましたので、治療前の状態とはお身体が違います。一週間程時間を置いて症状が出るか確認してみましょう。」
という事で一週間後の来院をお約束頂いて初回は終了しました。
【2回目】首を捻る動作で痛みは出なくなったが、左右へ倒す動作での痛みが再発した。
夕方に出る熱感もあるとのこと。(午前中の予約につき再現無し。)
前回と同様の治療に、熱の感度を下げる治療を加えて行った。
耳の裏の熱感は再現が無かったことから確認は出来なかった。
【3回目】6月に入り、首の痛みは無くなったが耳の後ろに出るジリジリとした熱感が気になり、再びご予約頂き来院。
首の症状が無くなったことから、治療内容を耳周りの血流改善へ変更する事を患者様へ告げて腰周りや足の触診を再度行わせて頂きました。
お尻の筋肉や、背中を縦断する脊柱起立筋、顎関節周囲の咬筋の筋緊張が診てとれ、それぞれの原因点になるツボへ刺鍼し確認をとってみました。
耳周囲がスッキリしたということだが、また予約が午前であったため熱感の再現無く主訴の確認は行えなかった。
【4~5回目】夕方にご予約を頂き3回目同様の治療を続けて行わせて頂きました。
5回目の時に…
患者様:「先生、実は前回の治療後から症状が治まっているんです。」
念のため同じ治療を行わせて頂き、症状が再発するようなら予約を入れて頂く様にお願いして今回の1連の治療は終了した。
■同時に治療した症状
右耳の後ろ側の皮膚の熱感と突っ張り
■使用した主なツボ
【1~2回目】陽輔・懸鐘・養老・大鐘(+後谿)
【3~5回目】申脈・承山・外谷・養老・後谿
■まとめ
来院された時の歩き方から足元が気になっていました。
右足には体重が乗っているのに、左足には乗っていない様な歩き方をされていたんです。
猫背もあり、背中が丸く顎を突き出す様な姿勢。
この姿勢では首へ負担がかかっても仕方がないといった感じでした。
なぜなら、この姿勢のために頚椎は過度なストレスを受けてしまうからなんです。
第1に、右足に体重が乗ってる姿勢から、身体は左へ開いてしまい正面を向こうとすると頚椎が右へ捻られて神経を圧迫・血行を阻害してしまいます。
第2に、猫背で顎を突き出す様な姿勢になると、首の筋肉は伸展され頚椎は後屈を維持するため神経を圧迫・血行を阻害してしまいます。
この姿勢を安定化してしまったために、顎関節周囲の筋肉が硬くなり、さらには神経症状として熱感が出てしまったと考えています。
ですから、これら2つの要因を紐解くことで今回の症状は改善できたのでした。